インデックス投資で最も重要なのは商品ではなく「時間」だと思う理由
「時は金なり」
このことわざを、一度は聞いたことがあると思います。
しかし、その意味を本当に実感したことがある人は、どれだけいるでしょうか。
インデックス投資の世界では、過去のデータがこの言葉の正しさを示しています。
前回の記事では、投資において最も重要なのは
「何を買うか」ではなく「出口でいくら必要か」だ
という話をしました。
今回は、その出口に向かって、実際にどのくらいの差が生まれるのかを、具体的な数字を使って見ていきます。
その前提として知っておきたい考え方があります。
それが、トマ・ピケティが提唱した
r > g
という関係です。
これは、資本のリターン(r)が、経済成長率や賃金の伸び(g)を上回る傾向がある、という考え方です。
簡単に言えば、
お金を持ち、運用している側の方が
労働だけで稼ぐ側よりも増えやすい構造がある
ということです。
この構造がある以上、同じ商品を買うのであれば、できるだけ早く市場に参加した方が有利になります。
商品選びの違いは、誤差に近い
投資の話になると、
・S&P500がいいのか
・オルカンがいいのか
という議論をよく目にします。
しかし正直に言えば、この違いに悩む意味はあまり大きくないと思っています。
どちらも世界経済の成長に乗る商品であり、長期で見ればパフォーマンスの差は大きく開かない可能性が高いからです。
最近では、多くの機関投資家やアナリストが
「今後10年間、米国市場は低迷する可能性がある」
といった予測を出しています。
しかし、その予測が当たり続ける保証はありません。
過去を見ても、市場予測が長期間当たり続けた例はほとんどありません。
仮にこの予測が当たったとしても、
長期投資を続ける立場から見れば、それは
高値掴みを避け、安く買い続けられる期間
とも言えます。
つまり短期的な停滞や低迷は、長期投資家にとって必ずしも悪いニュースではありません。
本当に重要なのは、
何を買うかではなくどれだけ長い時間、市場に居続けられるか
だと思っています。
出口資産は「時間 × 入金力」で決まる
前提条件は次の通りです。
・運用利回り:年率5%
・毎月積立
・60歳まで運用
・税金は考慮しない
ケース①
20歳から月5万円を40年間積み立てた場合
元本
5万円 × 480か月 = 2,400万円
運用結果
約7,600万円
ケース②
40歳から月15万円を20年間積み立てた場合
元本
15万円 × 240か月 = 3,600万円
運用結果
約6,100万円
入金額は後者の方が1,200万円多いにもかかわらず、出口の資産額は若い方が多くなっています。
ここから分かるのは、
出口資産は商品ではなく時間と入金力で決まる
ということです。
このシミュレーションの注意点
この計算は「毎年5%ずつ増えた」という前提で行っています。
しかし実際の相場は、そのように毎年きれいに5%ずつ上昇するわけではありません。
現実にはもっと大きな値動きの中で上下を繰り返し、結果として長期平均が年率5%前後に収束していく形になります。
最終的な資産額はこの前提でも大きくは変わりませんが、
毎年ほぼ同じ利回りになることはほとんど無い
という点は理解しておく必要があります。
後から取り返すのは現実的に難しい
40歳から月15万円を積み立てる場合、年間では180万円になります。
これは家賃や住宅ローン、教育費、生活費を払いながら誰でも簡単に作れる金額ではありません。
つまり
遅く始めても金額で取り返せばいい
という戦略は、収入と家計に余裕がある人だけが取れる方法です。
多くの人にとって現実的なのは
早く始めて、少額を長く続けること
だと思います。
そしてこの構造こそが
r > g
になりやすい理由でもあります。
ここで誤解してほしくないのは、年齢を重ねて時間というレバレッジが小さくなったとしても、投資を諦める理由にはならないということです。
取れる戦略の幅は狭くなりますが、それでも何もしないよりははるかに現実的な選択です。
資本側に早く回った人の方が、後から追いかける人よりも有利になりやすいのです。
分散も集中も「出口ありき」
分散投資をするかどうかも、本来は出口から決める話だと思っています。
S&P500とオルカンを両方買えば安心
と考える人も少なくありません。
しかし、オルカンの中身の約6割は米国株であり、S&P500は当然すべて米国株です。
この2つを同時に持つことは、分散というより米国株の比率を変えているだけに近い状態になります。
分散とは、
商品を増やすことではなく値動きの異なる資産を組み合わせることです。
もし分散投資では目標に届かないなら、集中するという選択も理屈としては間違いではありません。
それでも足りないなら、サテライト枠としてリスクの高い資産を組み合わせるしかない。
リスクは足りない分を埋めるために取るものです。
時間というレバレッジを使うか、値動きのレバレッジを使うか
最近では、積立ファンドの買付上位に
「日本株4.3倍ブル」のような高レバレッジ商品が入っていることもあります。
年齢別で見ると、高齢者ほど上位に入っているように感じます。
これは、本来若い時に使えた
時間というレバレッジ
を使わず、老後になってから
値動きのレバレッジ
に置き換えている結果ではないかと思っています。
レバレッジ商品の特性を理解しないまま、
大きく動く商品=有利
と考えてしまうと、投資ではなく投機に近づいてしまいます。
まとめ
出口資産は
商品ではなく
時間と入金力で決まります。
そして後から金額で取り返すのは、現実的にはかなり難しい。
だからこそ
何を買うかより
いつ始めるかの方が重要
なのだと思っています。
そしてそれを長く保有し続けることこそが最も重要であり、その握力を最大限にするための考え方が出口戦略だと考えています。
