ホルムズ海峡の緊張と原油調達、日本への影響を考える

エクラ

本日の注目銘柄:半導体(SOXX)

ハイテク株が底堅い動きを見せる中、[半導体ETF](https://fund-michi.com/soxx-decline-dow-record-rotation/)(SOXX)だけが2.23%安と急落。市場心理を映すVIXY低下とは裏腹に、AI相場の中核を担うセクターに何が起きているのか注目される。

Fear & Greed Index
SOXX (半導体) 週間チャート

導入:中東情勢が「価格」から「物流」の問題へ

米国によるイランへの新たな攻撃波が本日報じられ、中東情勢は「価格変動」の段階にとどまらず「物流の分断」という新たな局面に入りつつあるように見えます。ロイター(Reuters)は、攻撃を受けた後、一部の船舶が米軍による誘導下でのホルムズ海峡通過そのものを拒否し始めていると報じました。ただし、報道の時点では拒否した船舶の隻数や、それが海峡全体の通航量に対してどの程度の規模なのかは明らかになっていません。むしろ同じ報道の中では、イラン関連船舶が米国による海峡封鎖が本格化する前に駆け込み的にホルムズ海峡を通過したとも伝えられており、「回避」と「駆け込み通過」という一見矛盾する動きが同時に起きている点に、現場の混乱と不確実性の大きさが表れているといえるでしょう。本日はこの物流面の変化を軸に、日本への実務的な影響と、その裏にある不確実性の両面を考えていきます。

米国のイラン攻撃継続とJones Act検討、そして日本へのメキシコ原油カーゴ

ロイターによれば、米国は新たな攻撃波をイランに対して開始したと発表し、テヘラン側は米国との「存立をかけた戦争」になり得ると警告しています。これは軍事的エスカレーションが一段階進んだことを示す強い言葉であり、ホルムズ海峡の完全封鎖といった最悪シナリオが現実味を帯びつつあることを念頭に置く必要があります。日本は原油輸入の大半を中東に依存しているため、仮に海峡封鎖が長期化すれば、調達コストの上昇だけでなく、タンカーの迂回による輸送日数の増加や保険料(戦争リスク保険)の上昇といった形で、実務的な負担が広範囲に及ぶ可能性があります。

一方でホワイトハウスは、国内海運を米国籍船に限定する「ジョーンズ法(Jones Act、米国沿岸輸送を自国籍船に限る法律)」の適用免除延長を検討していると報じられました。これは単に「価格高騰への懸念」を示すだけでなく、米国政府自身がすでに国内のエネルギー価格上昇を看過できないリスクと認識し、規制緩和という実際の政策対応に動き始めていることを意味します。もし免除延長が実現しなければ、米国内の燃料輸送コストがさらに上振れするリスクも残っており、この検討の行方は今後の燃料価格動向を見る上での一つの指標になりそうです。

象徴的なのは、日本がイラン紛争開始後初めてメキシコ産原油カーゴを受け取るとロイターが報じた点です。ただし、これはあくまで単発の事例であり、日本の原油輸入における中東依存度(例年8〜9割程度とされる)そのものが短期間で大きく変化したことを示すものではありません。むしろ、有事における調達先の分散オプションが実際に機能し得ることを確認した一例、という位置づけで捉えるのが妥当でしょう。中東依存からの調達分散が本格的な構造変化として進むかどうかは、今後同様のカーゴ受け取りが継続・拡大するかを注視する必要があります。

湾岸株式市場やインド株式市場も本日は上値の重い展開となり、地政学リスクが世界の株式市場全体に重石となっている構図が続いています。半導体分野では、メモリーチップの急落がナスダック100を押し下げたとベンジンガ(Benzinga)が伝え、ASML決算による楽観論との綱引きも本日の話題となりました。なお、この半導体安については後述するように中東情勢との直接的な因果関係は薄く、業界固有の要因が大きいとみられます。

資金フロー分析:半導体安・原油高・ドル安が同時進行

本日の市場では、S&P500 ETFが底堅く推移した一方、NASDAQ100 ETFはやや軟調となり、なかでも半導体ETFは大きく値を下げました。半導体ETFは過去7日間ではほぼ横ばいで推移していただけに、本日の急落は目立った動きです。ベンジンガによれば、SanDiskが13%急落するなど個別銘柄の要因が大きく、メモリーチップの供給過剰や在庫調整といった業界固有の事情が背景にあるとみられます。「AI関連の物色一巡による利益確定」という見方も一部にありますが、個別企業の決算・需給要因が主導している可能性の方が高く、中東情勢と直接結びつけて説明するのは慎重であるべきでしょう。

他方、原油ETFは本日も上昇し、過去7日間では既に11%を超える急伸トレンドが続いています。ホルムズ海峡を巡る緊張と船舶の通航拒否という供給不安が、原油に資金を呼び込んでいる構図とみられます。ただしエネルギーセクターETFそのものは本日下落しており、原油先物と、原油関連企業の株式への資金の入り方には乖離が見られます。この乖離については、原油価格上昇が投機的な思惑買いに先行されている可能性のほか、決算シーズンを控えたポジション調整や個別企業要因が影響している可能性も否定できず、単一の解釈に決めつけるのは早計です。

ドル指数ETFは本日下落し、過去7日間も同水準で推移しており、ドル安がコモディティ全般への資金流入を後押しする一因になっているとも考えられます。ただし金ETFについては本日ほぼ無変化で、過去7日間30日間ともに下落トレンドが続いており、ドル安が金価格を明確に下支えしているとは言い難い状況です。ドルとコモディティの関係は原油ではある程度確認できるものの、金については別の要因(実質金利や地政学リスクへの選好度の変化など)が優勢になっている可能性があります。

VIX関連ETFは本日も続落し、過去7日間の下落トレンドと方向性が一致しています。これは表面上の市場心理の落ち着きを示すものですが、米国がイランへの攻撃を継続している最中であることを踏まえれば、この「落ち着き」は市場が地政学リスクを過小評価している結果である可能性も排除できず、楽観的に評価しすぎるのは危険です。ラッセル2000 ETFはS&P500 ETFを上回る上昇となり、小型株にもリスクオンの資金が入っている様子がうかがえますが、NASDAQ100 ETF自体は下落しており、「半導体安は資金逃避ではなくセクター内の付け替えに過ぎない」と断定するには材料不足です。現時点では、地政学リスクと業界固有要因が複雑に絡み合った、方向感の定まらない市場という評価が実態に近いでしょう。

FOMC見通しの上方修正が示す「利下げ後退」のリアル

6月17日発表のFOMC声明文では、政策金利は3.50〜3.75%で据え置かれ、12対0の全会一致で決定されました。声明文は「中東紛争に一部起因する高い不確実性」を明記し、エネルギーを含む特定セクターでの供給ショックがインフレを押し上げていると述べています。

注目すべきは経済見通し(SEP)の修正幅です。2026年末の政策金利見通しは中央値3.80%となり、3月時点から0.40ポイントも上方修正されました。これは利下げ回数にして0.25%刻みで約2回分の後退を意味します。同時にコアPCEインフレ率見通しも2026年末で3.3%へと0.6ポイント引き上げられており、声明文が言及する中東情勢由来の供給ショックが、この物価見通しの上方修正に一定程度反映されていると考えられます。ただしSEP自体は数値修正の要因を個別に明示しているわけではなく、これはあくまで声明文の文言との整合性から推測される解釈である点は留意が必要です。

FRB高官の発言スケジュールについては、日付を分けて確認する必要があります。前日にあたる7月15日には、ウォーシュ議長の議会証言が既に行われており、この上方修正されたインフレ見通しをどう説明したかが注目されました。そして本日7月16日には、ローガン総裁(ダラス連銀)、シュミット総裁(カンザスシティ連銀)という地区連銀総裁2名に加えて、ジェファーソン副議長(FRB本体の副議長であり、地区連銀総裁とは異なる役職)の発言が予定されています。地区連銀総裁とFRB副議長という異なる立場からの発言が同日に予定されていることで、SEPで示された利下げ後退見通しに対する連邦準備制度内部の温度差がより多角的に確認できる可能性があります。市場が実際にどの程度の利下げペースを織り込んでいるかについては本記事のデータからは直接読み取れませんが、SEP中央値との比較を通じて、今後発表される経済指標ごとに市場の期待修正が続くとみられます。

まとめ:分断する供給網の時代にどう向き合うか

本日の一連の報道は、中東リスクが単純な価格変動にとどまらず、物流・調達網の一部に実際の変化をもたらし始めている可能性を示しています。ただし、その規模や持続性については現時点では不確定な部分が多く、「構造変化」と呼ぶにはさらなる継続的な観察が必要です。日本のメキシコ産原油カーゴ受け取りは、有事における調達分散の選択肢が実際に機能した一例として注目に値しますが、これ単独で中東依存度が構造的に低下したと結論づけるのは早計です。

個人投資家にとって実務的に意味があるのは、以下のような具体的な観察ポイントでしょう。第一に、同様の非中東産原油カーゴの受け取りが今後も継続するか(単発か、トレンドの始まりか)。第二に、ジョーンズ法の適用免除延長が実際に決定されるか、その結果米国内の燃料コストがどう動くか。第三に、原油ETFとエネルギーセクターETFの乖離が縮小するか拡大するか(縮小すれば実需の裏付けが強まったサイン、拡大が続けば投機的な色合いが強いサイン)。第四に、7月16日の小売売上高やFRB高官発言を通じて、市場の利下げ期待とFRBのSEPとの間のギャップがどう調整されていくか。

半導体株の調整局面についても、地政学リスクとの短絡的な結びつけは避け、個別企業の決算内容や在庫状況といった業界固有の要因を注視することが、より実態に即した判断につながるはずです。エネルギー価格の一時的な上昇に一喜一憂するよりも、こうした複数のシグナルを継続的に追いながら、供給網再編が実際にどの程度の規模で進んでいるのかを見極める姿勢が求められます。

直近の主要経済指標

指標名最新値基準日
FF金利(実効)3.63%2026-06-01
米国10年債利回り4.58%2026-07-14
CPI(全米・季節調整済)332.572026-06-01
失業率4.20%2026-06-01
実質GDP(年率換算)31,865.72十億ドル2026-01-01
30年固定住宅ローン金利6.49%2026-07-09
ケース・シラー住宅価格指数330.872026-04-01
S&P500
+0.40%
NASDAQ100
-0.27%
ダウ平均
+0.24%
+0.05%
原油WTI
+1.01%
半導体SOX
-2.23%
Russell2000
+0.43%
ドル指数
-0.49%
VIX
-2.90%
ビットコイン
+0.35%

今後の重要経済指標

7月16日には小売売上高コントロールグループが発表され、市場予想は前月比0.5%です。前回の0.7%からの鈍化が見込まれており、消費の勢いが続くかが焦点となります。同日にはローガン総裁(ダラス連銀)、シュミット総裁(カンザスシティ連銀)という地区連銀総裁2名と、FRB副議長であるジェファーソン氏の発言も予定されており、前日のウォーシュ議長証言と合わせて、SEPで示された利下げ後退見通しに対する連邦準備制度内部の温度差が確認できる可能性があります。

昨晩の値動きを受けて、保有資産の評価額はこの後の為替の影響もありますが、現時点では次の基準価格更新で約3万円の増加になる見込みです。SPYが底堅く推移する一方でQQQはわずかに軟調、そして記事で触れた通りSOXXだけが2%超の急落と、セクターごとの温度差が目立つ一日でした。海峡を避けて航路を変える船のように、市場もまた資金の流れを静かに変えているのかもしれませんが、こうした短期的な偏りに一喜一憂するのは長期投資家の役目ではないと考えています。

記録ベースでは含み益が+42%台を維持し、前日比でも着実な積み上がりを見せていますが、これはあくまで淡々と積立を続けてきた結果に過ぎません。半導体という一大テーマの中でも明暗が分かれる日があるからこそ、特定セクターに賭けるのではなく市場全体を買い続けるという方針の意味を、改めて実感する一日でした。

※本記事は投資情報の提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任において行ってください。

ABOUT ME
エクラ
エクラ
40歳を過ぎたことをきっかけに、本格的に資産形成を開始。現在は投資信託を中心に、長期・分散・積立を軸とした運用を行っています。 年収の40%以上を投資に回しながら、実際の運用を通じて得た気づきや考えをもとに、資産形成や長期投資について発信しています。 短期の値動きに一喜一憂せず、タイミングよりも継続を重視するスタンスで取り組んでいます。
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